北の道27 ゴンタン − Vilalba


6月12日(日)昨日買っておいた食糧で朝飯を食べてゴンタンを7時半に出発する。今日のマルテンは早めに出発するらしく、私が朝飯を食べていたらもう出て行った。でもきっと道のどっかで会うだろう。
 昼・夕と2回も買出しに来たスーパーが道筋にあるのでメッシュのシャッターが閉まっているが思い出に撮っておく。この町の歩道に埋め込まれている目印は今まで見たことないものだった。金属製で透かしが入っていてオシャレだ。公営アルベルゲから500mの所に私営のアルベルゲがあるそうなので探しながら歩いていると、それらしいのがあった。私営だけど私が泊まった公営の方が大きくてずっと立派だった。でも、私営はサービスがいいので、お金に余裕のある人は公営より私営に泊まりたがるらしい。更に金がある人はもっと高いオスタルやオテルだろう。

 前にも何回か会ったことのある、機関車みたいな歩き方をする女性が後ろからやってきて、今日も両手を大きく横に振りながら凄いスピードで追い越していった。その後を連れの女性が追いかけていくが、明らかに後ろの女性は無理をしているように見えた。そんなこと続けてるとどっか痛くするよ。
※余談だが、2年後の2018年にこの後を追っていた女性と銀の道から続くサナブレスの道のアルベルゲで再会することになる。私はまったく忘れていたが、この女性が私に気が付いた。(※の部分は後から付け足しました)

 暗い森を抜けて急坂を上りだしたらずっと前を歩いているサンダルおばさんのナエミを発見。今日も元気に真っ赤な服装で、小脇に小さなバッグを抱えているスタイルなので遠目でもすぐ分かる。膝に大きなサポーターを巻いているので、膝が大分痛いようだ。でも、声を掛けるといつものように明るく挨拶してくれる。ナエミはいつも元気いっぱいだ。写真を撮ったら私のも撮ってやるからカメラを貸せと言っている。こうか!とおどけたポーズで一枚撮ったら、歩いている所も撮ってやると言うので2枚撮ってもらったが激しく手ぶれしていた。後で写真を見たら、遠く離れた後ろから機関車ガールが今日も両手を振り回して近づいてくるのが写っていた。

 先を歩いて行くと機関車ガールが道端に立ってずっとこちらを見ていたので何だろなと思いながら近づいていったら、「友達を見なかった?」と言っている。相当ぶっち切ってしまったようだ。巡礼路から離れたところにカフェがあったので、そこでコーヒーを飲んでいるんだと思うよと訳の分からない英語で伝える。私はそこに寄らなかったので見なかったけどとも。そのカフェと言うのは巡礼路に小さな看板を立てていて、こっから曲がって100mのところにカフェがあるよと書かれていた。カフェ好きのマルテンもきっとそこに立ち寄ってコーヒータイムにしたらしく、私は知らない内にマルテンを追い越していた。

 この地方特有の黄色い花が群生しているところで写真を撮っていたら、あの一日50km歩いた女性がやって来たので写真を撮らせてもらう。「50キロ歩きのスーパーレディー」と褒めたらニコニコと嬉しそうにしている。何回も一緒の宿になったが、彼女とはこれ以降会うことはなかった。

 空模様が安定してなくて、今日は合羽を着たり脱いだりしている。自分が濡れるのは大した問題ではないが、荷物が濡れるのは困るのでザックカバーはずっと装着したままにしておく。ただこれだと水を飲んだり食料を出したりするときにちょっと不便。立ったまま昨日の残りのパプリカをポリポリ食べる。

 車1台がやっとの泥道巡礼路なのに、その車1台がやってきた。人とすれ違うのもやっとの狭さなので端に避けていたらその脇に止まり、車のウィンドウが開いてアルベルゲのチラシを渡してきた。私営のアルベルゲは公営に客を取られてしまうので何とか自分とこに泊めたくて努力をしているようだ。チラシを見ると綺麗でまだ新しく見えるので、快適に過ごせそうな気がするからチラシ作戦は有効だろう。

 舗装路に出たら制限速度100kmの看板があった。道路の端っこを我々歩行者が歩いているんだから、100kmにしちゃダメだろー。でも、スペインにはこういう道路がときどきあるので、そういう道を歩く時はこちらが注意するしかない。間違って引かれでもしたら怪我ではすまされない。日本でこれをやったらマスコミが大喜びするだろう。

 小休止を2回入れて、11時半にVilalba村入り口に差し掛かったところ、道端にアルベルゲの看板があった。普通、公営アルベルゲは看板を出さないので、これは私営なんだろなと思いながら見てみると、どうやら目的にしていた公営アルベルゲらしい。え、もう着いたの?地図を見返してみたら本当にそうだった。予想したより1時間以上も早い到着だったので嬉しい誤算だ。そこから20分ほど歩いたら、ちゃんと道筋にガリシアマークのアルベルゲがあった。黒くて四角い3階建ての近代的建物で、隣には消防署があった。

 入り口にはスペイン人カップルが先着していて、1時オープンと教えてくれる。待っていたらガラスの扉の向こうから知った顔のおじさんペリグリノ登場。どうやって入ったのだろう?鍵が開いていた?何にしても早く入れるのは良かった。3階のベッドルームで好きな下段に寝袋を広げる。

 12:50になったら隣から消防士が制服のままやって来て受付を開始してくれる。隣が消防署だったのは分かっていたが、本物の消防士が仕事としてアルベルゲの運営を任されているとは驚きだった。ポルトガル人の道上ではアルベルゲがない所では消防署が一夜の宿を提供してくれると言うし、消防署とサンティアゴ巡礼は関わりがあるようだ。良く分からないけど。

 ここも6ユーロと共通価格だった。公営だがWi-Fiがいつものスマホの人だけ利用できるのじゃなくて、私のタブレットでも接続できる普通のものだった。ガリシアの公営アルベルゲはスマホ以外でも使える所があるのが分かったので、これからに希望が持てる。今日は天気が悪いので寒いのだが、こんな日に限ってシャワーがヌルイ。Wi-Fiは良かったがシャワーは減点しちゃおう。

 消防士に近くにスーパーがないか聞いたら、あってもドミンゴなので閉まっているそうだ。1.5km離れた町まで行けば小さな店がやっているようなことを言っている。往復3キロかぁ。少し考えよう。取り合えずキッチンを見渡してみて、どんなことが出来るか調べてから行動するのがいいだろう。どういう訳か、Mahouの1リットルビールが2本何気なく置いてある。もちろん未使用で栓がきっちりしてある。これ飲んじゃっていいのかな?アルベルゲにある食材は前の人たちが残した物で、基本的には何でも使ってオッケーだ。ビールだって同じことだろうと飲むことにしちゃう。スーパーないし。だが、立派なキッチンだけど鍋釜やグラスが置いてないので、大きな1リットルビールの瓶をラッパ飲み。手持ちのクッキーとパプリカの残りで昼飯みたいなことにしておく。食べながらフェイスブックを覗いていたら、友達が何人もログインしていたので5人とそれぞれ音声で通話できて楽しい。友達もスペインと話せたので興奮しているようだった。

 さて、半端な昼ごはんはそれでいいとして、食料はこれで尽きたので夕飯はどうしたものか。やっぱり往復3キロを歩いて町まで行くしかないようだ。小雨模様の中を町に向かって歩き出す。そしたら、同じ考えのペリグリノ二人が前を歩いている。地元スペインの若者で、やっぱり夕飯を食べに行くそうなので一緒に歩いていく。町に入ったところにチェーン店のスーパーがあったが、残念ながらクローズしていた。一軒のバルに入り、二人はMenu del Dia(本日の定食)を頼んだので私もそれにする。1皿目にサラダを頼んだのだが、出てきたものはパスタが主体でサラダとも言えない物だった。野菜が食べたいのだがなぁ。若者達はスープをチョイスしていたので、パスタと分かっていたらあっちのスープの方が良かったと思った。パスタは日本ならこれだけで食事1人前はあるほどの量だった。2皿目は鶏肉に定番のポテトフライ。デザートはヨーグルトで、もう腹いっぱいになる。グラスの白ワインを含めても9ユーロだった。

 若者が漢字に興味があるらしく、自分たちの名前を漢字で書いてと言うので、頭を捻って書いてあげるととても喜んでいる。リカルドは理科留戸、ダビデは脱美出と、いまいち良い字が思い浮かばなかった。若者が明日の朝飯が何時から食べられるかとママさんに聞いてくれている。食料が手に入らないんだから私もこのバルで朝飯にするしかないだろな。また三人で連れ立ってアルベルゲに戻っていく。隣の消防署は扉を閉じて閉店していたが、スペインの消防署って閉店するのか?

 夕方になったら雨がバシャバシャと音を立てて降り出して来た。この雨の中を歩いているペリグリノがいたら気の毒だなぁ。上の大きな窓から暫く通りを見ているが、やって来るペリグリノは一人もいなかった。
 このアルベルゲは大きくて立派なのに、何人も泊まりに来ないので、これはきっと昼間チラシを配っていた私営に行く人がいっぱい居るのかなと想像する。あとでマルテンに会った時に聞いたら、やっぱりそこにチェックインしたそうだ。


北の道28へつづく